
高リスクセクターの生物多様性に関する開示状況 自然関連情報開示とTNFDとの整合性評価
背景
本レポートは、2023 年 12 月に立ち上げた自然と生物多様性に関する研究シリーズの一つであり、産業と経済が自然資本に依存していることを示した「なぜ今、自然なのか:投資家と自然の関係性に関する動画」につづく研究です。
本動画のテーマに基づいて、企業による自然関連情報に関する開示、測定、評価の現状を調査することで、優れた事例の発掘、企業間におけるギャップや課題を特定、投資家が企業とのエンゲージメントに活用できる有益な情報を整理しています。TNFDが設定した8つの優先セクターから、現行基準またはプロバイダーに基づく環境パフォーマンスやレーティングの高さ、本社の地理的な所在地に基づいて2社ずつ抽出、合計16 社の開示内容を分析しています。
本レポートの主なポイント
- 自然関連情報の開示状況に関する評価では、ほとんどのセクターで対象企業がTNFDの枠組みに沿って情報開示を進めていることが明らかになりました。サンプル企業16社のうち半数以上が 全14 のコア提言に関連する情報を開示しており、16 社すべてが関連する自然関連の適切な目標を設定しています。
- 自然損失の主要な要因と開示されている指標の間にはギャップがみられます。評価対象企業が直面している最も差し迫った自然関連の課題には、土地利用の変化、原材料の搾取、水不足などがありますが、開示率が最も高い TNFD 開示指標は気候変動で、次に資源の搾取、汚染、土地、水と海の利用の変化が続きます。
- 自然に影響を与えるマテリアルな要因に関する報告には、セクター間で一貫性がありません。採掘・鉱物加工、インフラ、再生可能資源・代替エネルギーの評価対象企業は、TNFD 指標のうち60~70% について報告していますが、ヘルスケアおよび運輸の評価対象企業は、報告率が50% 未満にとどまっています。
情報開示の慣行に関する例
- 評価対象の 8 つのセクターすべてにおいて、取締役会が自然に対する最終責任を負っています。
- 8 つのセクターのうち 5 つのセクターでは、役員報酬が自然関連の指標に紐づけされています。
- 評価対象企業の 60% は、自然関連課題が現在、未来に及ぼす財務影響をすでに開示しています。
- 6 つのセクターの合計 10 社がダブル・マテリアリティを適用しています。資源変換と食品および飲料の企業のみが、ダブル・マテリアリティを適用したと述べていません。
- 評価対象の 8 つのセクターのうち 5 つのセクターの企業は、ミティゲーション・ヒエラルキーを自然関連課題の管理に組み込んでいます。