マイクロファイバー汚染
天然繊維、合成繊維、半合成繊維など全ての繊維はマイクロファイバーを放出します。マイクロファイバーは深海、海岸、河川、大気中、さらには動物、植物、ヒトの食物からも検出されています。生態系やヒトの健康に与える影響はまだ十分に解明されていないものの、環境と健康に及ぼす影響について急速に懸念が深まっています。
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マイクロファイバーとは、どのような問題ですか?
マイクロファイバーは主に3つの理由から、ヒトと環境に問題を与えています。
- 自然環境における幅広い分布:マイクロファイバーは世界中に遍在し、非常に小さく、低密度です。そのため、伝播が容易であり、地球上のほぼすべての生息地で検出されています。
- 生分解性の低さ:自然条件下における合成繊維の生分解はゆっくりとしかなされません。その結果、マイクロファイバーは自然環境に蓄積されることになります。
- 環境および人体への影響:海洋生物の場合、マイクロファイバーの存在が内分泌かく乱作用、有毒性、腸閉塞、繁殖力の低下、死亡と関連があることがわかっています。しかしながら、この分野はまだ十分に解明されておらず、今後のさらなる調査・研究が待たれます。
マイクロファイバー問題の規模はどのくらいの大きさですか?
毎年、推定48~428万トンの合成繊維および天然繊維のマイクロファイバーが自然環境に流出している可能性があります。(内部推定値。推定の詳細についてはレポートをご参照ください。)
これまでに、自然環境に蓄積された合成繊維のマイクロファイバーは、560万トンを超えると見積もられています。既存の研究は、主に洗濯時に合成繊維から抜け落ちるマイクロファイバーに焦点を当てているため、さらなる調査・研究が待たれます。
マイクロファイバー汚染による環境と健康への懸念が深まっているにも関わらず、マイクロファイバーの放出はほとんど規制されていません(OECD, 2021)。さらに、世界で消費される繊維量の増加に伴い、自然環境に流出するマイクロファイバーの量も増加が予想されます。世界の年間繊維生産量は、2030年までに約33%増加して、146百万トンになると見積もられています。(the Textile Exchange 2020).
レポートの2つの目的
1. マイクロファイバー汚染の発生源とその影響に関して、すでに分かっている内容を整理する。
2. マイクロファイバー汚染低減のために政府、産業界、投資家が採り得る措置の範囲を概説する。
Ella Harvey, Dr Rory Sullivan and Nicky Amos著