
DE&I: ジェンダー そしてその先へ
背景
DE&I、すなわち「多様性、公平性と包摂」への配慮は、世界的にサステナブル投資へのアプローチに対する期待値になりつつあります。
投資家がDE&Iを考慮する背景には、ビジネスと道徳上の論点という2つの重要な視点があります。様々な研究によると、DE&Iの統合は、財務的リターンの改善だけでなく、社会的・人的資本へのポジティブな影響につながる可能性があります。しかし、研究における方法論的な頑健性に対する懸念や、人口統計学上の多様性に主に焦点が当てられていることなどから、このテーマは現在も論争が続いています。
総合的で包括的なアプローチこそが、重要な認知レベルでの多様性や、ビジネスへのポジティブな成果を促進する上で、より効果的です。そしてそれは、それぞれのグループや個人特有のニーズを考慮しながらも(公平性)、異なる視点を共有できる差別のない環境を保証する(インクルージョン)、すべての従業員に利益をもたらすような観点から幅広く考慮されたものであるべきです。
エグゼクティブサマリー
本レポートの執筆にあたり、本研究所は、投資家にとってのダイバーシティの範囲を拡大し、性別以外のアイデンティティを含め、エクイティとインクルージョンに焦点を当てることを目的としています。民族、性的指向、社会経済的背景、障害、脳や神経の多様性に関連するDE&Iに関する主要な考察を提示し、これらの特性の交差性を分析することで、投資家が投資先企業の潜在的なリスクを評価し、エンゲージメントを通じてベストプラクティスを推進するための必要な知見を整理しています。
DE&Iに対する投資家の注目が高まっている主な要因: 財務的リターンに影響を与えうること、ステークホルダー(メディア、従業員、証券取引所、規制当局、新たな幅広いDE&Iの報告フレームワークを開発する業界団体を含む)からの圧力を受けた重要性の高まり、多様で公平かつ包摂的な職場環境を構築することが正しいことであるという道徳的配慮。
DE&Iの新たな報告フレームワークでは、より広範なアイデンティティがカバーされており、エクイティやインクルージョンの要素を考慮するものもあります。本レポートでは、性別以外の多様性に関連する報告への配慮を明示的に拡大した例として、米国ナスダックの取締役会開示ルール、EUのCSRD、英国FCA、CFA協会のフレームワークなどを挙げています。このようなフレームワークにより、投資家にとっては、DE&I関連データの利用可能性が向上、それに伴い重要性が増大する可能性があります。
幅広い観点でDE&Iを考慮する必要がある背景や、その課題、ビジネス上のメリットを概説するほか、投資先企業のリスク評価やベストプラクティスを促進するためのエンゲージメント質問リストも掲載しています。また、変革が注目されている日本における DE&I 慣行の概要、その人口統計学的な背景も紹介しています。