
サステナブル投資: ファンド・ガバナンスの現状と課題解決への経路
サステナブル投資の急速な発展は、ファンド・ボードに対してガバナンス上の課題を提起しています。本レポートでは、これらの課題を特定すると共に、特にグリーンウォッシングが懸念される中で、投資家の信頼を維持するために専門知識とガバナンスをどのように強化するかについて提案しています。
レポート概要
本レポートでは、サステナブル投資の急速な発展によりファンド・ボードが直面しているガバナンス上の課題について浮き彫りにしています。
本レポート『サステナブル投資:ファンド・ガバナンスの現状と課題解決への経路』は、ファンド・ボード専門家がどのようにサステナブル投資ファンドを監督しているのか、その方法に迫り、調査しています。調査および執筆はFund Boards Council(英国のファンド・ガバナンス専門の調査・コンサルティングを実施する業界団体)が行いました。本レポートには、英国、アイルランド、ルクセンブルク、日本、香港、オーストラリアの6地域にわたる25名のファンド・ボードの理事へのインタビューから得た調査結果が含まれています。
なぜサステナブル投資はガバナンス上の課題を提起しているのでしょうか?
世界のサステナブル投資ファンドの運用資産残高はわずか3年間で4倍に膨れ上がり、2019年初頭の約7千億ドルから2021年末には3兆ドル弱に達しています。この成長に伴い、サステナブル投資に対する新たな規制やアプローチが次々と導入され、定義や開示要件にも変化が生じています。
サステナブル投資はファンド・ボードのガバナンス上の責任を根本的に変えるものではありませんが、このサステナブル投資の発展の速さと広がりが、ファンド・ボードに対していくつかの課題を提起していることが、この調査で分かりました。
ファンド・ボードが直面している課題は何か?
このように急速に変化する環境において、ファンド・ボードの理事は以下の点に立ち向かっています。
- 規制当局による監視の強化やグリーンウォッシングのリスクを軽減する方法
- サステナブル投資に関するファンド・ボードの監督責任について規制当局の期待が明確でない状況
- サステナブル投資に関する十分な専門知識を確保し、強固な監督のために活用できるようにすること
ファンド・ガバナンスで特に重点的に取り組むべきことは何か?
本レポートでは、以下の4つのガバナンス領域の観点からファンド・ボードの責任を考察しています。
- ファンドが投資家に約束する内容の伝達
- 法令順守
- リスク管理
- ボードの構成と専門知識
レポートの3つの目的
本レポートはファンド・ボードによるサステナブル投資ファンドの監督方法の改善に役立つことを目指しています。具体的には、以下の3つの改善を目的としています。
- 探る:ファンド・ボードの責任の範囲内で、サステナビリティの要素をどのように考慮するか探る。
- 解読:サステナビリティの要素の考慮に関して、ファンド・ボードが直面する課題を読み解く。
- 提案:サステナブル投資ファンドの監督を促進するための管理情報を含め、ファンド・ボードがこれらの課題を解決するために取り得る実践的な行動を提案する。
[i] 出所:Morningstar Global Sustainable Fund Flows: Q2 2022 in Review